家族愛あふれる温かい物語.主人公はお父さん.ラストに向かってだんだんと感情が高まっていく展開も伏線回収のタイミングもよくて一気に読んだ.
正欲など朝井リョウの最近の作品を読んだあとに初期の作品を読むと「いつ墜落するのかな」ってちょっと,というかかなりハラハラしながらページを進めることになるけど,この作品はそういうことはなくて暖かくて優しい物語だった.
思春期のむつかしい年頃の心の声をちゃんと丁寧に言語化していて,それはきっと誰でも経験のある感情で,だから読んでいて共感する部分も多くて,そういった文章に出会うたびにさらに深く小説の世界に引き込まれた.
家族っていいなーって思う作品でした.
「それなら,お腹を空かせるのだって幸せだな」 朝井リョウ「星やどりの声」,角川文庫 P.77
「大人になる瞬間なんて,ないんだよ」 朝井リョウ「星やどりの声」,角川文庫 P.201
父の声がした.あたたかかった.朝井リョウ「星やどりの声」,角川文庫 P.283
みんな,誰かの子として生まれ,その家族として育つ.だけど,いつかはその家を出て,大切な誰かとまた新しい家族を築いていく.
家族は生まれ変わっていく.ひとり生まれ,ひとり出ていき,ひとり生まれ,ふたり出ていき,また新しい形になる.朝井リョウ「星やどりの声」,角川文庫 P.303
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