エンジンオイルってやっぱり純正が一番なの?
クルマを所有していると必ず経験するエンジンオイル交換.少しでもこだわりのある人は自動車メーカー純正のエンジンオイルではなく,オイルメーカーの販売するエンジンオイルに交換することが多いと思う.
一般的に自動車メーカー純正のエンジンオイルは安価で,その性能を大きく謳っているものは少ない.一方でオイルメーカーのエンジンオイルは多くが高級指向で,その価格も自動車メーカー純正より割高だ.
しかし,本当にオイルメーカーの販売するエンジンオイルは自動車メーカー純正のそれより優れているのだろうか?
自動車業界でエンジニアとして働く僕が,次の2つの疑問に答えたい.
・オイルメーカーのエンジンオイルは優れているのか?
自動車メーカー純正エンジンオイルはダメなのか?
もしあなたがクルマを普段使いするのであれば自動車メーカー純正エンジンオイルで十分だ.
ここで言う普段使いとは,買い物や送り迎え,週末の遠出など公道を法定速度程度で走るような使い方.
その理由はとてもシンプルで,自動車メーカーは純正オイルを使用してエンジン開発をしているから.
この話をすると,
「そんなの当たり前じゃん,それでも不安だから少しでもいいオイルを入れたいんだよ」
と,意見をもらうことがあるけれど,普段使いであればその不安はまったくいらない.
なぜなら,自動車メーカーのエンジンテストはとても過酷で,テスト後には各部品の磨耗状況をキッチリ確認しているから.
さらにオイルの交換頻度もそのテストによってちゃんと見極められているので,自動車メーカー推奨よりも極端に短い距離でのエンジンオイル交換は,不安を取り除く以外の効果はあまりない.
自動車メーカーでのエンジンテスト
自動車メーカーで行われるエンジンテストはとても過酷だ.エンジンオイルはそんな過酷なエンジンテストに耐えられるように選ばれている.
どのようなテストが行われているか?については言及は避けたいけれど,どれも長時間,高負荷の過酷な条件である.
なぜなら,自動車メーカーは市場でエンジンを絶対に壊したくないから.
エンジンの破損は大きな事故に繋がりかねないし,ブランドイメージにも大きな傷をつける.あなたも所有しているクルマのエンジンが走行中に壊れ,路上で止まるようなことがあれば,もう一度同じメーカーのクルマを買おうという気にはならないはず.
自動車メーカー純正のエンジンオイルはそんな過酷なエンジンテストにも耐えられるように選ばれている.
エンジンテスト後の部品調査
自動車メーカーはエンジンを過酷な条件でテストするだけでなく,テスト後に部品をひとつひとつ分解調査している.そしてエンジンオイルもちゃんと評価されている.
その調査の中では部品の磨耗状況についても確認する.
エンジンオイルは部品を磨耗から守るための大切な潤滑剤だ.
もし部品に大きな磨耗があれば,エンジンオイルの性能も見直される.
エンジンテスト後の部品調査は,部品だけでなくエンジンオイルも評価しているのだ.
エンジンオイルの交換頻度
クルマを普段使いするのであれば,エンジンオイルの交換頻度はメーカー推奨の距離で十分だ.
なぜなら,その交換頻度も自動車メーカーでのエンジンテストによって見極められているから.
例えば本田技研工業のエンジンオイル交換頻度を見てみよう.
出典: 本田技研工業
さらにシビアコンディションもちゃんと考慮されている.
出典:本田技研工業
これらの交換頻度は自動車メーカーでの厳しいエンジンテストによって評価されたものだ.
なので自動車メーカー純正オイルを指定の頻度で交換すれば問題ない.
オイルメーカーのエンジンオイルは優れているのか?
オイルメーカーの製造・販売するエンジンオイルは優れているものが多い.
しかし「どのオイルがいいのか?」と,その見極めはとても難しい.
なぜなら,自動車メーカーのように過酷なエンジンテストをユーザーが行うことは時間とお金のコストがかかり事実上不可能だから.
なので,もしあなたがクルマを普段使いするだけであれば,オイルメーカーの販売するオイルを使っても自己満足以上の経験はあまり得られない.
ただし例外はある.
それは,自動車メーカーの想定していない環境で使用したり,想定以上の性能を手に入れたい場合.そして古いクルマ(特に過走行車)に乗っている場合だ.
自動車メーカーの想定していない使い方をする場合
クルマのエンジン周り(吸排気や冷却,エンジン内部など)の部品を社外品に変更した場合は,オイルメーカーのエンジンオイルを検討してみよう.
自動車メーカーは独自の基準でエンジンテストを行う.その条件はもちろん純正部品を使用した条件で,街乗りなど普段使いを前提にしている(とは言っても,最高回転数までキッチリ評価している).
部品を純正以外のものに交換すれば,そこから先は自己責任だ.例えばエアクリーナーを交換する場合でも,純正品と社外品では吸塵力に差が出て,エンジンオイルの汚れるスピードは変わる.そうなればエンジンオイルの交換頻度やオイルの種類を検討する必要がある.
なので,部品を社外品に交換した場合はオイルメーカーのエンジンオイルを検討してみよう.
そうなると
「じゃあどうやってピッタリなオイルを見つけるのさ?」
と疑問に思う人も多いはず.
だけど残念ながら確実な方法は無い(なのでたくさんのエンジンオイルが売られている).
手段は2つで,様々なエンジンオイルを試し肌感覚で評価するか,クルマを純正のまま乗るか,のどちらかになる.
僕は純正のまま乗るのをオススメする.
自動車メーカーの基準以上の性能を手に入れたい場合
もしあなたが自動車メーカーの基準以上の性能を手に入れたい場合は,オイルメーカーのエンジンオイルを検討してみよう.
実は自動車メーカーでもオイルメーカーの販売する高級なオイルを使いたい,と考えることがある.だけれどそれはコスト的に不可能.
自動車メーカーは独自に定める基準(磨耗や異音など)を達成できて,かつできるだけ安いオイルを使用する.
なので,もしあなたがその基準以上の性能を手に入れたい場合には,オイルメーカーのエンジンオイルを検討してみよう.
とはいえ,先ほども話したけれど,その性能の見極めはとても難しい.
エンジン音は聴き比べれば感覚的にわかるかもしれないけれど,フリクションや磨耗については燃費を比べるくらいしかできない.
しかし,その燃費についても自動車メーカーで徹底的に検討されているので,エンジンオイルをオイルメーカーのものに変えたからと言って,劇的に改善されない.
それくらい純正オイルはよくできている.つまり抜群にコスパがいい.
古いクルマ(特に過走行車)に乗っている場合
古いクルマ(特に過走行車)に乗っている場合はオイルメーカーのエンジンオイルを検討してみよう.
なぜなら,自動車メーカーでのエンジンテストは新品のエンジンを用いて行われるから.
自動車メーカーでは,何年もかけて10万キロ以上を走行したエンジンの評価をすることはあまり無い.
なので,もし過走行気味のクルマであればオイルメーカーのエンジンオイルを検討してみよう.
このときオイルを選ぶポイントは,少しオイルの粘度を上げてみること.
純正オイルが5W-10であれば,10W-15や10W-20のオイルにしてみよう.
5Wとは外気温が低温時のオイル粘度を表し,10や15は高温時のオイル粘度を表す.
過走行車はエンジン内部の部品が程よく磨耗して部品同士のクリアランスが新品に比べて広くなっている場合が多い.
一般的に硬いオイルは油膜が厚いので,その厚い油膜で広くなったクリアランスを上手に埋めることができる.
そうすれば,部品の磨耗も防げてクリアランスをちょうどよく保つことができる.
まとめ|エンジンオイルは純正が一番?
クルマを普段使いするのであれば,エンジンオイルは自動車メーカー純正で十分だ.
なぜなら,自動車メーカーは純正オイルを使用してエンジン開発しているから.
だけれど,メーカーの想定していない条件でクルマを使用するときには,オイルメーカーの販売しているエンジンオイルを検討してみよう.
以上,最後まで読んでいただきありがとうございます!
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